新宿で「マルホランド・ドライブ」を見た後、池袋に移動して新文芸坐の「倒錯するカルト映画の世界」というオールナイト上映を見てきました。
以下、それぞれの作品の感想です。
イレイザーヘッド
「マルホランド・ドライブ」のデヴィッド・リンチ監督の初監督作品とのことです。
主人公のヘンリーはメアリーと関係を持ち、メアリーは赤ん坊を生みます。しかしその赤ん坊は未熟児であり、ヘンリーは赤ん坊を引き取ることとなります。
と言っても、この作品はストーリーなんてあって無いような理解不能な展開を見せ、ひたすら生理的に不快で神経に障る映像表現が続きます。
ただし、単に気持ち悪い映像をダラダラ流しているわけではなく、意味不明に見える作品世界にもどこか一貫性が感じられ、完成度の高さや面白味を感じました。
がんばれゴエモンみたいな髪型のヘンリー。
ヘンリーとメアリーの子供。この作品は全般的に、脳、内臓、肉塊、奇形・・といった造形ばかりで気持ち悪いです。
マルチプル・マニアックス
マツコ・デラックスを凶暴にしたような巨体の女主人公、ディヴァインが、彼女が率いる「変態一座」の興行を隠れ蓑に、凶悪犯罪を重ねていく話です。
1970年の公開当時のヒッピー文化を笑いに変えている面があり、ドラッグやセックスにまみれた病んだ集団や、躊躇無く殺人を重ねるディヴァインの狂気が描かれます。
この作品の面白さは、ディヴァインの強烈過ぎるキャラクターとその暴走っぷりなんでしょうね・・。気分が悪かったですが、最低最悪に徹していて、嫌いではありません。
女主人公のディヴァイン。演じているのは男性(俳優名もディヴァイン)です。
リキッド・スカイ
ニューヨークのアパートメントの屋上に着陸したUFOが、セックスでオーガズムに達した人間を感知し捕食する話です。
登場人物がドラッグとセックスのことしか考えていない輩ばかりですし、絵の具を顔に塗りたくったような化粧に嫌悪感をおぼえました。
またこの作品は、全編にテクノ音楽とサイケっぽい意味不明な映像が多用されており、おそらくその退廃的な世界観と美的感覚がウリなのでしょうが、私には全く受け付けられませんでした。
私はこういう世界が格好いいとは思えません。
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
ジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」シリーズの第一作ですね。
宇宙から降り注いだ放射能によって死者が蘇り、人を襲うという話です。
民家に立て籠もった人たちが、扉や窓に板を打ち付け、ライフルや炎で必死に防戦しますが、最初は数人だった生ける死者が、みるみるうちに数十人に増えていき、絶望的な状況に陥ります。
今となっては王道の展開ですが、全く古さを感じさせず、とても面白かったです。その後大量に作られたゾンビ映画と違ってグロテスクさは控えめ、そしてモノクロの静かな映像がむしろ新鮮に感じました。
ゾンビ映画はこの作品で既に完成していたように思います。私はこの作品はカルト映画というより、ホラーの傑作だと思いました。
カラーのグロ映像よりモノクロ映像の方が不吉さを感じます。
土曜の夜22:30から始まり、日曜の朝6:05に終わりました。カルト映画は生理的な不快さが伴いますので、一作一作は興味深いのですが、徹夜で連続して見るのはきつかったです。
朝の池袋。
(備忘)
新文芸坐のH列の席で見ました。ちょうど良かったと思いますが、新文芸坐は観客席がフラットなので前の人の頭がスクリーンに少し被って気になりました。