映画「ベン・ハー」を見てきました。
1925年のサイレント映画で、澤登翠氏による活弁と、「カラード・モノトーン・デュオ」による生演奏付きの上映です。
今年4月に1959年にリメイクされた「ベン・ハー」を見たとき、映像のリアリティと宗教性の強いストーリーのバランスが悪いなど、私はこのブログで結構酷評しました↓
ですが、不満はあるにせよ、ベン・ハーを演じたチャールトン・ヘストンや、凄まじい馬車レースのシーンの印象は強烈で、今も私の中では「『ベン・ハー』は凄い。傑作」という思いが残り続けています。
そのこともあり、今回オリジナルの1925年版「ベン・ハー」が活弁&生演奏付きで上映されると知り、とても関心があったので、(わざわざ午後休暇をとって水戸から新宿まで来て)見てきました。
ストーリーは1959年版とほぼ同じです。
ローマ帝国に支配されたユダヤの地で、救世主キリストが誕生します。その一方で、ユダヤ王族の子孫であるベン・ハーが、運命に翻弄され、奴隷に身を落として苦難の連続の人生を歩みますが、キリストの教えによりその心が救済される。そんな話です。
不思議なもので、私はこの1925年版は、映像技術が古いこともありリアリティを求めようという気にならず、例えば「キリストが手をかざすと死んだ赤ん坊が生き返る」シーンがあるのですが、もともと「物語」だと思っていますので違和感なく受け入れられました。
むしろこの1925年版は、1959年版の「全然トーンが異なるキリストとベン・ハーの物語をくっ付けた」という不自然な印象はなく、「あくまでキリストを中心に、同時代を生きるベン・ハーの苦難と救済が描かれた」として、すんなり入ってきました。
馬車レースのシーンは1959年版が圧倒していますが、それ以外については、「ベン・ハー」は1925年版で既に完成していたのだなと思いました。
活弁と生演奏についてですが、活弁を担当した澤登翠氏は、さすがの現代の活弁の第一人者と言いますか、とても引き込まれました。
(ちょっぴりミスがあったように思いましたが)
素晴らしかったのは「カラード・モノトーン・デュオ」による生演奏でした。ギターとフルートのデュオでしたが、約2時間半の映画で、それぞれのシーンに合わせて効果的な演奏をされて、すごいなと思いました。
映画の後、エレベータホールで話す機会があったのですが、「とても練習されたのではないですか?」と聞くと、「楽譜は集めたがそれも3時間前だ」とのご返事。本当かな?と思いますが、プロは楽譜さえあれば演奏できてしまうものなのでしょうか?
映画自体も良かったですが、それに活弁と演奏という生身の人間による芸が加わり、臨場感に満ちたとても贅沢な鑑賞経験になりました。

(備忘)
新宿武蔵野館のスクリーン1、D列で見ました。この映画館は観客席の傾斜が足りなくて前の人の頭でスクリーンの一部が隠れがちだと思っていましたが、今回はそんなことはありませんでした。「スクリーンの高さを変えた?」と思いました。この映画館は結構興味深い作品を上映するので、「前の人の頭」問題が解消されたならとても喜ばしいです。