行人日記@はてな

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「豚と軍艦」

昨日は「嵐を呼ぶ十八人」に続けて、二本立てだった今村昌平監督の「豚と軍艦」を見ました。

今村昌平監督は、「にっぽん昆虫記」や「エロ事師たち」など、社会の底辺で生きる人間の生態を生々しく描き、そして社会の歪みを追求した「重喜劇」を多く作っています。

この「豚と軍艦」もそのような重喜劇でしたが、笑わせどころが多く、他の作品に比べてコメディ要素が強かったように思います。

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物語の舞台は、昭和30年代半ばの横須賀。主人公の欣太は、ヤクザの組の下っ端の下っ端でしかない、ただの若いチンピラです。

彼は、米軍基地の兵隊を相手に売春宿のポン引きをしたり、組が中国マフィアと組んで始めた、米軍基地の残飯を横流しした養豚ビジネスで、豚の世話係になるなど冴えない感じです。

でも欣太が面白いのは、悪ぶってはいるものの、どこか悪人に成りきれない人の良さや可愛げを感じさせるところです。長門裕之が、そんな青春の延長線上にある中途半端なワルを好演しています。

そんな欣太だからなのか、恋人の春子は、「貧しくてもいいから、欣太にはカタギになって欲しい」と強い期待を抱き、何度も何度も裏切られても、諦めずに欣太から離れずにいます。

物語は、中国マフィアからいいように搾取される日本のヤクザ、そのためにヤクザから無慈悲に搾取されるカタギの人々。そして生活のために米軍兵士の愛人になる日本人の女性。

そんな、奪われたり、裏切られたりといった、当時の日本の底辺社会が生々しく描かれつつも、例えばヤクザに殺された死体が目をひん剥いていて哀れだけどなんとなく可笑しいなど、言葉にしづらいユーモラスさがあります。

また、丹波哲郎が、実際は胃潰瘍なのに胃がんだと思い込んでいるヤクザのアニキを演じていますが、自殺を決意しつつも思い切れずに情けない姿を晒し続けるなど、珍しくコミカルな役柄だったりします。

そして、ネタバレ過ぎるので詳しく書きませんが、欣太がヤクザの組の中で散々いいように扱われてきたことに気付き、暴発して引き起こす、ハリウッド映画のようなド派手な大立ち回り。昭和のモノクロ映画とは思えません。

横須賀の繁華街に満ちた、日本人や米国人を問わない人間の欲をリアルに描きつつも、全く昭和30年代の映画らしくない、エンタメ色が強い面白い作品でした。

(余談)

偶然なのか早稲田松竹が狙ったのか分かりませんが、「嵐を呼ぶ十八人」と同じく、この映画でも小林旭の「ズンドコ節」が劇中歌として流れていました。

広島の造船所、横須賀の繁華街と舞台は違いますが、同じ時代にそれぞれの土地で日本人が泥臭く生きていたのが感じられて興味深かったです。

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