映画「国宝」を見てきました。
※以下、ネタバレ有りです。未見の方は読まない方がいいと思います。
映像美に圧倒されました。
私は歌舞伎の知識がほとんどありませんが、この映画の歌舞伎の舞台は、役者の衣装や舞台装置が豪華で色鮮やかで、とても美しいと思いました。
また、人間の細やかな心情を全身全霊で表現しようとする役者の姿に、息を飲みながら見入りました。伝統芸能の凄さに触れた気がしました。
人前に出ることに慣れている筈の役者であっても、「舞台に出るのが怖くて震えが止まらない」という描写も、とてもリアルで共感できました。
映画館で見て良かったと思いました。
一方で、ストーリーについてはやや薄いように感じました。
この映画のテーマは、一見すると「血筋か？才能か？」です。
主人公の喜久雄は、血筋を持たないまま（師匠の二代目半二郎の血縁ではなく、かつ養子縁組もせず）、実子を差し置いて三代目を襲名した、世襲の歌舞伎界では極めて異例の存在です。
そのため、後ろ盾であった二代目の亡き後、長年にわたって歌舞伎界から排除され、苦難を味わい続けることとなりますが、その後復帰し、女形の頂点を極めて人間国宝に認定されます。
つまり、「才能が血筋を凌いだ」結果になるわけですが、「なぜそれが実現できたか？」という点については、「それだけの才能があったから」程度のとてもシンプルな描かれ方でしかありませんでした。
閉鎖的な歌舞伎界で、喜久雄が復帰し大役を演じられるようになるには、本人だけではなく、周囲の協力者たちの泥臭い努力があったと想像されますが、そのあたりはバッサリ端折られていました。
個人的には、我が子を差し置いて三代目を継いだ喜久雄に対し、強い嫌悪を抱いていた二代目半二郎の妻と、どのようにして和解したのかとても気になりましたが、特に描かれませんでした。
おそらく、この映画は「美しさを描く」ことに主眼を置いているため、「血筋か？才能か？」という対立軸は、エンタメ性を引き立てるための設定として使っているに過ぎないものと思われます。
まあ、「あれもこれも」とすると作品の軸がぶれてしまったりしますので、ドラマ性を省略する取捨選択をしたのだとしても、それはそれで仕方ないのかなと思いました。
(備忘)
TOHOシネマズ水戸内原のスクリーン2のF列で見ました。少しスクリーンに近く、G列が丁度良さそうでした。
