行人日記@はてな

昼の休みに今日見る雲も 頼りない雲 流れ雲

「リズと青い鳥」

1月2日、長男と「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」を見た後、続けて「リズと青い鳥」も見ました。

以前も書きましたが、私はこの映画を昨年1月に見たものの、主人公の女子高生の心理描写が難解で咀嚼しきれませんでした。

その後も、「あの場面はどう理解すればいいのだろう?」とずっと考え続け、是非もう一度見てみたいと思っていました。

今回それが叶ったわけですが、2回目を見てもまだピースが埋まらないところがあり、今日まで記事を書けずにいました。

約一ヶ月経って、ある程度自分なりに咀嚼できたような気がしますので感想を書きます。

*以下、映画の内容に触れますが、【【ネタバレ有り】】です。

──

この映画は、TVアニメ「響け!ユーフォニアム」のスピンオフ作品ですが、独立した別の物語です。

主人公は、北宇治高校の吹奏楽部に所属する3年生のみぞれ。みぞれは中学生の頃からの親友の希美(のぞみ)といつも行動を共にしています。


希美とみぞれ。TVアニメよりも線が細くて色合いも淡いです。

しかしその関係はどこか妙です。二人は並んで歩くのではなく、いつもみぞれが希美の後ろを付いて歩いています。

人と関わるのが苦手なみぞれにとって、希美は唯一の友達。「決して希美を失いたくない」という気持ちを、みぞれは強く抱いています。

だから全ての基準が希美。

希美が好きなものがみぞれも好き。希美が水を飲めばみぞれも水を飲む。吹奏楽部に入部したのも、希美が入部したからです。

そんなみぞれには自我や主体性が感じられず、まるで希美という親鳥から分離することを恐れている雛鳥のようです。


希美に付いて歩くみぞれ。

二人が所属する吹奏楽部は、コンクールの自由曲として「リズと青い鳥」を選びます。童話「リズと青い鳥」を楽曲化した作品です。

童話「リズと青い鳥」では、森の家でひとりぼっちで暮らす少女リズのもとに、少女に姿を変えた青い鳥が現れます。リズは喜び、青い鳥と幸せな日々を過ごします。


幸せに暮らすリズと青い鳥。

しかしある日リズは、「私は貴女を閉じ込める鳥籠。貴女には羽があり、どこまでも広がる大きな空がある。貴女から翼を奪えない」と、青い鳥に別れを告げます。

青い鳥は悲しみますが、リズのもとを離れ、大空の彼方に飛び立っていく・・。そんな話です。


リズと別れ、大空に飛び立つ青い鳥。鮮やかな水彩画のようでとても美しいです。

オーボエのみぞれとフルートの希美は、ソロの掛け合いのパートを担当します。それはまさにリズと青い鳥の別れの場面でした。

「なぜリズは青い鳥と別れる選択をしたのか。私なら決して希美と別れたりしない」。自分をひとりぼっちのリズに重ねていたみぞれは理解できず、演奏も単調なものとなります。

そんなみぞれを見かねた、吹奏楽部を指導する新山先生は、みぞれに「リズではなく、青い鳥の視点で考えてみたら?」とアドバイスします。


新山先生のアドバイスを受けるみぞれ。

みぞれは気付きます。

青い鳥は自由であることの代償として、いつも孤独、ひとりぼっちだったこと。

青い鳥は、リズと森の動物たちが楽しそうに過ごしている様子を、遠くから眺めていたこと。

リズとの二人の生活に執着していたのは、むしろ青い鳥だったこと。

青い鳥は「決してリズと別れたくない」と思っていましたが、愛するリズの思いだからこそ、別れを受け入れたこと。


離れたところからリズと森の動物たちを眺める青い鳥。

この気付きにより、みぞれの演奏は見違えるものとなりました。同時に、自分をリズに、希美を青い鳥に重ねていたみぞれに、真逆の視点を与えました。


覚醒したみぞれ。

みぞれは、新山先生から音大への進学を勧められていましたが、特に音大には関心がありませんでした。

ですが希美が音大を目指すと言い出したため、「希美が行くなら私も行く」と、みぞれも同じ音大を志望することにしました。

しかし希美は、みぞれと異なり、自分が新山先生から音楽の才能を認められていないことを悟り、音大から普通大学に志望を変えました。

また希美は、みぞれに対し、プライドが傷付けられたような、嫉妬心にも通じる複雑な感情を抱き、みぞれと距離を置くようになりました。


みぞれとのハグを拒否する希美。

みぞれはとても戸惑いましたが、これまでのように「希美が普通大学に行くなら自分も行く」とはせず、離れていく希美を受け入れます。

ここがまさに、この映画のキモです。個人的な解釈が混じりますが、、

みぞれは、希美が望んでいるのはみぞれとの交流を絶つことではなく、みぞれが希美から分離していくことだと感じ取ります。

(これまでのような親鳥と雛鳥のような関係を続けるのは、希美にとってつらくて無理だということです。人の気持ちに疎いみぞれは、そこまでは察せられなかったかもしれませんが)

そして、希美の思いは強く、分離は避けられないことも察します。

また、童話で得られた気付き、「希美の思いを受け入れる、みぞれにとっての愛のあり方」(青い鳥の視点)、「希美には希美の生き方があり、束縛してはいけない」(リズの視点)もありました。


希美にありったけの感情をぶつけるみぞれ。思春期の少女同士の疑似恋愛として見たら、また別の見方が出来るのかもしれません。

「なぜみぞれは、希美が離れていくことを受け入れられたのか?」

これはおそらく、この映画の最も大きなクエスチョンであり、様々な考察が生まれると思われますが、私は上に書いたようなことなのかな?と思いました。

その後の二人の関係は、自立した対等なものとなり、物語は健全な「joint」として完結します。


異なる進路を選んだ二人。それでも二人の友情はこれからも続くのでしょう。

難しい作品ですが、「物語は、ハッピーエンドがいいよね♪」とまとめたい、そんな気持ちになりました。

──

私は、この「リズと青い鳥」は、ストーリー、映像、音楽。いずれも完成度が高く、かつ調和しており、奇跡のような作品だと思います。

特に、上に書いたようなみぞれの心理に至っては、素人には理解が難しい、心理学で扱う専門領域の内容ではないか?と思いました。

この「リズと青い鳥」は、山田尚子監督作品の完成形ではないかと私は思いました。言葉では表しきれない作品です。

ちなみに長男は「よく分からなかった」と言っていました。無理もないと思いました。


川崎チネチッタのLIVE ZOUNDで見ました。最高の環境だったと思います。

映画が終わった後、観客から拍手が沸いていました。素晴らしい作品だと思いましたので、私も拍手をしました。


www.youtube.com
予告編です。


www.youtube.com
第三楽章。リズと青い鳥の別れの場面です。溢れ出すみぞれの才能に圧倒される希美。

filmarks.com