フランシス・フォード・コッポラ監督の「カンバセーション…盗聴…」を見ました。
カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した作品ということで、かなり期待して見たのですが、私は正直ラストで「???」となりました。
主人公はジーン・ハックマン演じる盗聴技術のプロフェッショナルです。
彼は、依頼を受けて男女の密会現場で交わされる会話を盗聴しますが、その録音テープのために殺人事件が起こるのでは無いかという疑心暗鬼に捕らわれ、精神的に追い詰められていきます。
しかし、彼が何度も繰り返し殺人現場を想像しては恐怖に苛まれるのに対し、現実の事件は目立った展開を見せず、そのまま映画は終わります。というわけで私は「???」となりました😦
ジーン・ハックマンが演じる頑強そうな主人公は、仕事を行ううえでの内面の苦悩や不安はあれど、現実は現実として対処できそうに思えたので、「あれ?」という感じです。
Filmarksの感想を見ると、「傑作」「素晴らしい」という評価が多いのですが、私には全くそう感じられませんでした。私は頭悪いのでしょうか😓
追記;(かなりネタバレ)
その後も考えていますがやはり腑に落ちません。
この作品では、どこまでが現実で、どこからが主人公の盗聴屋の想像なのかが分かりづらい、むしろ現実と想像を交錯させる演出がなされています。
恐怖に捕らわれた盗聴屋の想像は↓の三種類があります。
・盗聴の依頼主である大企業の重役が、録音テープによって妻の不倫を確信し、妻とその不倫相手の男を殺害する。
・重役の妻と不倫相手の男が、邪魔な夫(重役)を殺害する。重役の秘書もグルかもしれない。
・重役が交通事故で死ぬが、偶然の事故を装った殺人であり、妻と不倫相手の男が関わっているかもしれない。
結局、この映画は何が現実なのか明かされないまま終わります。そもそも現実では誰も死んでいないのかもしれません。
そう考えると、この映画は、「盗聴」という危険な行為に関わる人間の、常に不安が付きまとう精神状態の危うさや脆さを描いた心理作品と捉えるのが妥当に思えます。
しかしその割には、重役の秘書が、手段を選ばずに盗聴屋から録音テープを奪取していることからも、現実の方も穏やかならぬ状況と思え、今一つ釈然としないのです。
思えば、主人公が疑心暗鬼に包まれ恐怖心を募らせるというプロットは、ヒッチコック作品にもよくありますが、事実は主人公の想像と全く違うというオチが付いていたものです。
この作品は、そのような現実と想像のギャップの有無すら良く分からないので、作品のテーマが見えづらくなってしまっているように思えます。