フォーラム福島で「浜の朝日の嘘つきどもと」を見ました。福島県限定の共通鑑賞券を使いました。
テレビドラマは見ていないのでその前提での感想になります。
あさひの高校生の頃のエピソードが良かったと思いました。震災成金と呼ばれた父親のために、友人を失い孤立したあさひ。悩みがこじれやすい年頃に、茉莉子先生と出会い、地域や学校の狭い世界とは違う価値観を知る。貴重な出会いに救われて本当に良かったなと思いました。
一方でこの映画は、家族をテーマにしつつも、あさひと父親の関係に踏み込まなかったのが残念でした。
原発事故時、「誰かがやらなければならないから」と、多くの人が放射能を恐れる中、南相馬市に乗り込み住民避難に奔走した父親。愛する娘の名前を会社の名前にした父親。
そんな父親を理解しようとせず、原発事故時の行動のために家族が崩壊したと、大人になった今もわだかまりを抱え続けるあさひ。朝日座が存続できたのも、娘のために高額な寄付を寄せた父親のお陰なのに、それでもあさひは、父親の愛情を素直に受け入れられない。
原発事故時に深く傷ついたのは想像できますが、あさひの父親や家族に対する感情は、まるで一方的な被害者のようで、高校生の時から時間が止まっているかのような幼さを感じます。
震災や原発事故が絡んで難しさがあるのは分かりますが、父親の悪評が事実であれ誤解であれ、それでも心の整理を付けなければ前に進めないのではないかと危惧します。
もし次作があるならば、父親や家族に対する感情に整理を付け、人生の次の段階に踏み出すあさひを見たいですね。
全般的にストーリーのスカスカ感が否めず、かなり物足りなかったです。映画ではなくドラマで良かったのでは?と思いました。