行人日記@はてな

昼の休みに今日見る雲も 頼りない雲 流れ雲

「君たちはどう生きるか」

子供たちと「君たちはどう生きるか」を見てきました。

以下、ネタバレ沢山です。

見終わった後、長女に「面白かった?」と聞くと「うん・・・?」と微妙な返事。長男はさっぱり理解できなかったようです。

ジブリ映画ならではのファンタジー世界での少年の冒険もので、それはそれで面白いのですが、「冒険により少年は何を得たのか?」が何も伝わってきません。

宮崎駿監督は、おそらくこの映画で伝えたいメッセージがハッキリとあった筈です。しかしその描写を意図的に割愛し、ヒントを小出しにするに留めているようです。

ですので「想像するしかない」感じですね。または「どのように解釈するかは観客一人一人に委ねる」ということなのでしょうか。

矛盾なく解釈することは難しいのですが、私が印象に残ったのは、いきなりですがラストの塔が崩壊するシーンです。ちなみに舞台は第二次大戦中の日本です。

この塔は、主人公の少年の、第二次大戦の空襲で亡くなった母親の故郷にあり、いくつもの異なる世界が時を超えて繋がっていて、少年は塔の内部で少女の頃の母親と出会います。

塔が崩壊するにあたり、将来母親となる少女は自分が元いた世界に戻ろうとします。しかしそこに戻れば、数十年後に戦争で死ぬ未来が確定しています。それでも少女は戻ります。

少年は少年で、塔の主から「お前の世界は(戦争で)炎に包まれる」と聞かされていながら、塔に入った父の再婚相手(母親の実の妹)を連れ、元いた世界に戻ります。

日本が敗戦し、沢山の日本人が非業の死を遂げるのは、現代の私たちから見れば確定した未来です。

少年も、これから生まれてくるであろう弟や妹も、父や新しい母親もみんな死ぬかもしれません。それでも少年は、新しい母親を連れて私たちがいるこの世界に戻ります。

私にはそれらの行動が、「運命には逆らえない。死ぬまでこの世界で生きるしかない」という、至極現実的なメッセージのように感じました。

ジブリ映画は、非日常の世界で主人公が成長し、強く生きる姿を通じて「努力すれば、勇気を持てば、人は変われる、未来は変えられる」というメッセージを投げ続けてきました。

この映画は、観客を一気に現実に引き戻し、「申し訳ないがそれはファンタジーに過ぎない。人間はこの世界でそのままの自分で生きるしかない」と諭しているように感じました。

(8/6追記)

その後、ネットで色々な人のレビューを読んでいますが、「なるほど」と思うものもあれば、私もそうですが受け止め方が本当にバラバラだと思うレビューもとても多いです。

この映画に対して今感じているのは、「この映画はよく分からない。でももし分かったとしても、おそらく共感できないだろう」ということです。

後になって思うと、ひねた爺さんの相手をしているような不快感ばかりが残ります。