先日、「二つの季節しかない村」を見てきました。
舞台はトルコの東アナトリアの小さな村。邦題のとおり、長い冬と短い夏しかない土地です。
主人公はサメットという美術教師。教養がありプライドが高い男性です。
サメットは外部からこの土地に赴任して4年目になりますが、一年の大部分が暗い雲と雪に覆われるこの土地を嫌い、都市への転任を強く望んでいます。
強い不満を溜め込んでいるためか、彼の態度と行動はとても悪いです。
例えば、気に入った女子生徒を露骨に贔屓し、他の生徒がそのことに不満を漏らすと、激高して生徒たちを怒鳴り付け、高圧的に押さえ付けます。
ネタバレになるのであまり書きませんが、彼は同僚や異性に対しても、強い猜疑心を抱き、狭量、利己的であり、あえて人を深く傷つける行動を取ります。
こんな感じの映画です・・。サメットの人間性に嫌な思いをさせられるばかりでした。
どこか文学的な映画だと思いました。
ドストエフスキーの小説のように、悪い主人公と周囲の人間の心理を緻密に描いているのだと思いますが、私には難解で映画のメッセージを読み取れませんでした。
「About Dry Grasses」(乾いた草について)という英題がヒントのように思いました。
過酷な自然に抑え付けられる暗く長い冬が終わり、サメットは雪溶け後の山を登ります。弱々しいながらも生命を感じさせる乾いた草を踏みしめながら。
強い抑圧から解放され、自分の素直な気持ちにふと気付かされる。「乾いた草」はその象徴のように感じました。
(追記)
「乾いた草」は、日照が足りないため生育が悪く、黄色く枯れかかっています。もしかしたら「生命」よりも「死」に近いのかも?という気がしてきました。
サメットが乾いた草を踏みながら独白するラストを、もう一度じっくり見たい気がします。
(お金が掛かるから見ませんが)
(備忘)
ヒューマントラストシネマ有楽町ではシアター2のG列の席で見ました。
列がどうこうと言うより、狭いスペース、学校の視聴覚室かと思う小さなスクリーン。登場人物の表情がよく見えませんでした。
よく確認しなかった私が悪いのでしょうが、有楽町は大きな映画館が多いイメージがあったので、目を疑ってしまいました。