行人日記@はてな

昼の休みに今日見る雲も 頼りない雲 流れ雲

「狂った一頁」

「狂った一頁」を見てきました。

テアトル新宿の「時代劇が前衛だった」特集上映の一作品です。この映画は時代劇ではありませんが、1926年(大正15年)に公開されたとても古い無声映画です。

この映画では、当時の脳病院を舞台に、その生涯を、牢獄のような病室に隔離されて生きることを余儀なくされた、多くの狂人たちが描かれています。

憑かれたようにバレエを踊り続ける娘、赤ん坊を亡くしたために気が触れた女、そして失われた人間らしさを取り戻させるため狂人たちに「笑いの面」を着けさせる雑役夫・・。とにかく全編が「狂気」に包まれており、見る者の情緒を不安定な非日常に引きずり込みます。

タイトルの「一頁」とは日記を指しているようです。朝が訪れれば日記の新しい一頁が開かれるわけですが、時間が止まったかのように同じことを繰り返すだけの狂人たちには今日も明日も無く、そもそも日記に書くような人間的なことは何もありません。

この映画はとっても不条理で、作り手の意図や思いはよく分かりません。芸術的な優れた作品と評価されているようですが私には分かりません。ですが、大正時代の日本でこのようなアバンギャルドな映画が作られていたという事実には驚かされました。

ちなみに今日の上映では、片岡一郎と上屋安由美がスクリーンの脇でそれぞれ活弁とピアノ伴奏を行いました。映像と「生の喋り・演奏」がしっくりとしていて全く違和感がありませんでした。特に生の演奏はとっても臨場感があって、見る者を不安にさせるこの映画の雰囲気を際立たせていました。

昔は無声映画を活弁と演奏付きで上映するのが一般的だったそうですが、技術的な制約の中で編み出された、結果としてとてもいい形での上映方法だったのかもしれないと思いました。



当時の広告のようです。「変態特別興行」って・・。


「笑いの面」を着けて踊る狂女。

https://ttcg.jp/theatre_shinjuku/movie/1015500.htmlttcg.jp

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