昨日に続き、テアトル新宿の「時代劇が前衛だった」特集上映で、「雄呂血」(4Kデジタル修復版)を見てきました。
阪東妻三郎が主演した1925年(大正14年)公開の無声映画です。以前にも見たことがありましたが、映画館で上映される貴重な機会でしたので見てきました。
あらすじは、阪妻演じる浪人が主人公。彼は無頼漢(ならずもの)と恐れられ侮蔑されていますが、実は一度たりとも悪行を働いたことなど無い、自分の信念に従って正しく生きようとする善良な男。
一方、町の衆から尊敬を集める侠客の親分こそが、希代の好色、女をさらっては手籠めにする真の悪党。ある夜、その毒牙にかかった哀れな夫婦を救ったがために、主人公は誤解され役人に追われる羽目に。
無実を訴えるも聞き入れられず、彼を捕らえようとする役人相手に、遂には剣を抜いて抵抗せざるを得ません。その結果、とうとう罪の無い人間(役人)を殺してしまい、茫然自失とする主人公・・。
昔の映画ですので、悲劇のヒーロー的な面が強調されているのは否めませんが、主人公の心理描写に踏み込むなど、深みのある作品だと思いました。
この映画の魅力は、何よりも阪東妻三郎その人だと思います。当時の日本人には珍しい大柄な体、大きな顔、そして強い眼力。ひとつひとつのシーンに阪妻の強い思い入れを感じますし、凄みのある「顔」が強烈に印象に残ります。
そして今の時代劇でも見ないド派手な大立ち回り。百人近い役人を相手に、剣を構えて前に出ては下がり、下がっては前に出るの繰り返し。その疲労困憊ぶりがとってもリアルです。
素晴らしいエンターテインメント作品だと思いました。
「女!女!女!」という内容では無かった気がしますが・・。
クライマックスの大立ち回り。悲壮感に満ちた阪妻がとってもカッコいいです。