新宿シネマカリテで、イタリアン・ホラーの巨匠、ダリオ・アルジェント監督の「動物3部作」を見てきました。
「動物3部作」とは、アルジェント監督の初監督作品「歓びの毒牙(きば)」、2作目「わたしは目撃者」、3作目「4匹の蠅」の3作品の総称で、下のように、原題に動物が含まれているためこのように呼ばれるそうです。
「歓びの毒牙」 … L'uccello dalle piume di cristallo(水晶の羽を持つ鳥)
「わたしは目撃者」 … Il gatto a nove code(九尾の猫)
「4匹の蠅」 … 4 mosche di velluto grigio(灰色のベルベットの蠅4匹)
(翻訳:ChatGPT)
今回、これら3部作が一挙リバイバル上映されるというので見てきました。
以下、感想です。ネタバレ有りです。
新宿シネマカリテに貼られていたポスター。
歓びの毒牙(きば)
主人公の男性が、偶然通りかかった美術商の店内で女性がナイフで刺されるのを目撃します。
しかし、その光景に得体の知れない違和感を覚えたことから、警察と連携しながら事件の真相を探るうちに、自らも事件に巻き込まれてしまう・・、そんな話です。
アルジェント監督の初監督作品ということですが、構図や音響がとっても印象的で、アルジェント監督らしい「こだわり」が強く感じられました。
また、「来るぞ、来るぞ!と思っていたらやっぱり来た!」という、アルジェント監督が観客を怖がらせよう怖がらせようとしているような煽りっぷりでした。
さらに絵画や彫刻など、意味がありそうだったり無さそうだったりするモノにも、しっかりとした伏線とその回収があったりします。
「随分細かいところにこだわってくるな(笑)」と思いました。緻密というか偏執的というか。低予算のB級っぽい雰囲気がありましたが、飽きずに楽しめました。
わたしは目撃者
遺伝子研究所で侵入事件が発生。時期を同じくして研究所の博士が列車に跳ねられ死亡します。
この事件?事故?の関連性を、現役記者と盲目の元記者が調べますが、犯人に一歩先を越され、関係する人物が次々と殺害されてしまう・・。そんな話です。
なんだか異常性や狂気といったテイストが薄く、お行儀のいいサスペンス、スリラーという印象でした。
アルジェント監督というより、ヒッチコック監督の作品を見てるような気分になりました。ラストの屋根の上での争いは、ヒッチの「泥棒成金」を思い出しました。
4匹の蠅
自分をつけ回す不審な人物を、ふとしたはずみで殺害してしまったドラマーの男性が主人公です。
正体不明の人物が殺害の様子を撮影しており、主人公の彼のもとには、殺された男の身分証や殺害時の写真などが送られ、執拗にいたぶられた彼は精神が酷く苛まれてしまいます。
そんな話なのですが・・。
主人公の男性には意外と協力者が多く、「神」や「教授」と呼ばれる浮浪者たち、とても頼りない同性愛者の私立探偵が、作品に彩りを添えています。
彼らが醸す冗談っぽい雰囲気がホラーに似合わず、「あれ?これは笑うところ?」と戸惑うぐらいでした。
(「神」の登場時は、唐突&派手に「ハレルヤ」が流れ、アルジェント監督の悪ノリとしか思えませんでした・・)
そんなこともありましたが、映画の終盤はちゃんとホラーに戻り、安心したのも束の間、見ているこちらの精神がチリチリするような精神異常どっぷりの展開となります。
そして・・。
「アルジェント監督の首チョンパ好きは、この映画が原点だったのか??」と思わせる、感慨深いラスト・・。Oh...
というわけで、総じてとっても楽しめました。アルジェント監督がホラーを楽しんで作っており、観客は監督の趣味やこだわりに付き合わされているような、そんな作品群でした。
入場者特典のポストカード。最近は旧作のリバイバルでも特典が貰えて嬉しいですね。
物販で惹き付けられてつい買ってしまいました。アルジェント監督の「サスペリア2」も「サスペリア」も素晴らしいですよね。
www.youtube.com
予告編動画です。雰囲気が分かると思います。
(備忘)
新宿シネマカリテはミニシアターで、かつ座席の配置がスクリーンに対して斜めっていて特殊です。C-10席がベストだと思います。
新宿駅構内の柱は、茨城観光の広告一色でした。「いばらき若旦那」も右下に小さく写っています。