
ウィリアム・ワイラー監督の「女相続人」を見てきました。
物語の舞台は19世紀のニューヨークです。医師で資産家の父親は、年頃なのに、内気で非社交的な一人娘のキャサリンのことを案じています。
そんな中、パーティでキャサリンの前にハンサムな青年モーリスが現れます。キャサリンの家を度々訪れて求愛するモーリスに、彼女はたちまち夢中になり、彼との婚約を受け入れます。
しかし父親は、モーリスが、財産目当てにキャサリンと結婚しようとしていると決め付け、二人の結婚に強く反対します。キャサリンは必死に父親を説得しますが、父親の疑いは揺らぎません。
やむなくキャサリンは、父親の財産の相続権を放棄してモーリスと結婚することを決意し、二人は駆け落ちを約束しますが、支度を整えて待つ彼女の元にモーリスが姿を現すことはありませんでした・・。
そんな話です。以下、【【ネタバレ】】です。
キャサリンは、一連の騒動を通じ、父親から「亡くなった美しく華やかな母親と比べ、取り柄の無い女」と思われていたことに気付きます。
また、上に書いたように、キャサリンが財産の相続権を放棄するつもりであることを知ったモーリスからは裏切られ、捨てられてしまいます。
父親と婚約者の本心を知り、大いに傷付いたキャサリンは悲嘆に暮れますが、一方でその心には、静かですが強い憎しみも生まれていました・・。
この映画の前半は、キャサリンの不器用さをユーモラスに可愛らしく描きつつも、一方で彼女を「世間知らずの小娘」として蔑み、利用しようとする周囲の人間のリアルが描かれます。
特に父親は、一見常識的ですが、妻を亡くした深い悲しみを抱えているためか、娘を母親と比べ、母親のように育たなかった娘を受け容れないという、歪んだ父娘関係となっています。
そして映画の後半は、キャサリンのターンとなります。彼女からは、それまでの幼さ、未熟さを感じさせる表情が消え失せ、表向きは落ち着いた大人の女性に変わっています。
キャサリンを演じたオリヴィア・デ・ハヴィランドの演技は見事で、「人間を容易に信じてはならない」という信念を強く感じさせる変貌ぶりを見せます。
彼女の中での父親とモーリスに対する憎しみは根強く、病気で危篤状態となった父親は死ぬ前に彼女と会いたがりますが、それでも会いません。父親以上の非情さで恨みを返します。
そして、亡くなった父親の財産を相続したキャサリンの前に、再び姿を現したモーリスに対しても・・。
この映画では、キャサリンも含めた登場人物たちの心の暗部がとても冷徹に描かれています。特に、ダークサイドに落ちたキャサリンの心理描写は、見応えがあって面白いと思いました。
(備忘)
今回もシネマヴェーラ渋谷の前から4列目の席で見ました。スクリーンからの距離はちょうど良かったと思います。

渋谷109の前に設置された温度計。34.5度。歩いているだけで汗が噴き出しました。